2015年3月5日木曜日

報告:シンポジウム「原発と差別、戦後日本を再考する」

2月22日開催したシンポジウムがいろんなところで報告されています。盛況でしたが、主催者側としては、反省するところも多くあります。質疑応答の時間が大部分、フロアーからの質問に対する講演者の回答に終わり、それはそれで意味のあることでしたが、講演者、問題提起者、コメンテーター間の議論をする時間がなく、議論を深めることはできませんでした。

小出裕章さんは、初めて福島の実態に触れずに、原発と核兵器とは同じものであり、日本は既に潜在的核兵器を保有する国になっているということを強調され、白井さんは、原発体制とは、「「永続敗戦レジーム」の象徴であり中核」であることを話されました。私の問題提起の内容はブログで公開しました。http://oklos-che.blogspot.jp/2015/02/blog-post_23.html

しかし白井さんは、ネグリについての論文で、「核兵器に対する申し立てや闘争は、倫理的動機に基づきつつ、明確に政治的なヴィジョンを持った闘争として展開されなければならない」と書かれており(『ネグり、日本と向き合う』P.206)、最新の『日本戦後史論』では、「この敗戦レジュームを何とかして片づけてしまわないとどうしようもないと思っているのですが、どうやって片づけたらいいか、これというアイデアがなかなか出せないんです」(P.74)と心情を吐露されています。

2・22のシンポを踏まえてお二人の講師の講演内容をさらに深めていただき、私たちもしっかりと議論した内容を反映できるような本を出版したいと計画しています。ご期待ください。

以下、東京新聞3月4日付の記事と、原発メーカー訴訟の原告である佐藤和之さんがレイバーネットで発表されたものです。


報告:シンポジウム「原発と差別、戦後日本を再考する」


2月22日、東京・水道橋にある在日本韓国YMCAアジア青少年センターにおいて、「原発と差別、戦後日本を再考する」を共通テーマとするシンポジウムが開催されました。主催は同シンポ実行委員会で、司会は加藤千香子さん(横浜国立大学)と番匠健一さん(立命館大学)。全体の参加者は市民・労働者・学生・研究者・ジャーナリストなど約150名で、大阪、九州、アメリカ、フランスからの参加もありました。当日のプログラムと発題者の言葉は、以下の通りです。
①基調提起:崔勝久さん(原発メーカー訴訟原告・NNAA事務局長)、②講演1:小出裕章さん(京都大学原子炉実験所)「原子力平和利用は差別の上に成り立った」、③講演2:白井聡さん(文化学園大学)「戦後日本にとって原子力とは何であったか」、④コメント:大野光明さん(大阪大学)、⑤総合討論。
崔勝久さん:「原発は差別の上で成り立つ」ことを歴史的・社会構造的に解明し、閉塞状態の日本社会を突破していくには、「平和と民主主義」を掲げる市場主義と議会主義を前提とする国家の枠を超え、一人ひとりが自分の中にある神話からの解放を求め、格差と差別を克服する日常的闘いを始め、世界の仲間と手を繋げていくしかありません。
小出裕章さん:原子力は徹頭徹尾、無責任で、犠牲を他者にしわ寄せする。日本で「原子力」と呼ばれているものは「核」と同じものであり、原子力を選択してしまう限り、核兵器と縁が切れなくなる。日本という国は意図的に「原子力の平和利用」を標榜しながら、「核兵器」を保有する能力を持ちたいと思ってきた。原子力が抱える真の問題は、それが差別や平和と関わっていることである。
白井聡さん:「敗戦の否認」に、戦後レジームの全体重がかかっている。日本が戦争に負けていないのであれば、大義も勝利の可能性もなかった戦争を始めたことの責任を、誰も取る必要はないし反省する必要もない。基地を「抱きしめ」なかった沖縄と、原発を「抱きしめた」原発立地自治体。そこには、原発における差別、差別の否認、自尊心の問題がある。戦後日本にとって原発体制とは何であったのか。それは、戦前を中途半端にしか清算できなかった「戦後レジーム」、すなわち「永続敗戦レジーム」の象徴であり中核である。
後半は、大野光明さんの鋭いコメントに続き、参加者を交えて活発な討論がなされました。終了後の交流会にも大勢の参加があり、経験と意見を交換しました。なお、シンポジウムの詳細については、次のURLから動画でご覧になれます。
参加報告:佐藤和之(佼成学園教職員組合)

1 件のコメント:

  1. 朝日のWEBRONZAN 3月5日付けで大久保真紀さんがさんが2・22シンポジウム「原発と差別、日本の戦後を再考する」の紹介をされています。
    http://webronza.asahi.com/natio…/articles/2015030400003.html
    小出裕章さんと白井聡さんの話された内容をしっかりと要約されているので一読ください(有料です)。

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