2015年3月4日水曜日

これから病院費は原発に請求しなければならないねー韓国イ・ジンソプさんの闘い

韓国の古里原発と奥さんの甲状腺がんとの因果関係を認める判決を勝ち取ったイ・ジンソプさんの影響は大きく、その後、韓国の原発立地地域において甲状腺ガン患者300名の第二次集団訴訟が決定し、現在家族を含めると1000名を超える第三次集団訴訟の準備が進められています。

私たちは、イ・ジンソプさんの闘いは、原発は事故の恐怖があるということに留まらず、原発の存在そのものが地域住民の甲状腺ガンや白血病などの疾患を生み、自然を汚染していることを明らかにしたと考えています。だから、韓国だけでなく、日本や台湾においても世界の原発のあるところではイ・ジンソプさんの闘いを支持・支援し、その闘いから学ぶべきことが多くあると考えるのです。私たちは、イ・ジンソプさんを支持・支援する後援会を日本において作ろうと計画しています。


 この記事は昨年韓国の聯合ニュースで配信されたものですが、イ・ジンソプさんの闘いの経過、その実態を正確に報道しており、韓国在住の岡田さんが翻訳してくださったものをご紹介します。


 (c)聯合ニュース イ・ジンソプ(I JinSeob)氏(マイクを持った人)。家族は古里原発近距離に居住している。【2012年、提訴時の記者会見用の横断幕】


イ氏は20127月、家族らの癌発病などについて韓水原を相手に訴訟を提起した。訴訟を提起した契機は単純だった。疑問のためだった。釜山広域市、機張郡(キジャングン)、機張邑(キジャンウプ)に住むイ・ジンソプ氏は、家族らを襲った病魔が原子力発電所のためはでないかと疑った。イ氏は古里1号機、2号機から7.7km以内(近距離地域)に居住する。古里1号機は、1978年に稼動を始めた国内1号原子力発電所だ。(2007年設計寿命が終わったが、政府は2017年6月まで寿命延長を決めた。古里1・2号機の他にも古里3・4号機、新古里1・2・3号機などが近隣で運行中である)

イ氏は1990年機張郡(キジャングン)が故郷の夫人パク・クムソン(Pak GeumSeon)氏に出会い、2年後息子・均道(GyunDo)氏を産んだ。息子は1級自閉症障害の判定を受けた。

イ氏は2011年、直膓癌との診断を受け、夫人パク氏は2012年甲状腺癌に発病した。手術で甲状腺を摘出したパク氏は放射線同位元素治療を受け、一生甲状腺ホルモン剤を服用しなければならない。近所に住むイ氏の妻の母も2009年胃癌手術を受けた。

イ氏は20127月、韓国水力原子力(韓水原)を相手に、家族らの発病に対する損害賠償請求訴訟を起こした。原発近所に住む住民が起こした1号訴訟だった。2年間の裁判の末1017日、イ氏は奇跡のような勝利をおさめた。

イ氏は「勝訴の可能性を想像さえできなかった」と話した。
釜山東部地方法院・民事2部(部長判事チェ・ホシク(Choi HoSik)は、「韓水原はイ氏の夫人パク・クムソン氏に1500万ウォンの慰謝料を支給せよ」と判決した。原子力発電所と近隣住民の甲状腺癌発病に関係がある、という裁判所の初めての判決が下されたのだ。裁判所は「公害訴訟で被害者に因果関係を科学的に立証しろ、と要求することは、公害による社会的・法的救済を事実上拒む結果になる」と表明した。それと共に、裁判所は「加えて、企業が無害だということを立証できない限り、責任を免じることはできない」という大法院判例を引用し、立証責任は韓水原にあるとした。

こういう判決が下されたのは、韓水原が安易に対応してきたことが大いに作用した。公判は4回開かれた。イ氏の弁護人は、民主社会のための弁護士会(民弁)所属ソ・ウンギョン(Seo EunGyeong)弁護士が引き受けた。公益訴訟であるわけだ。韓水原の代理人は、政府法律公団所属弁護士の2人が引き受けた。公判過程で韓水原側が安易に対応したのは、信じるに足る根拠があったためだ。裁判所も引用した「原発従事者および周辺地域住民疫学調査研究」がそれである。199112月~20112月、36000人余りを対象にコホート調査(特定要因を受けた集団と、受けなかった集団に対する追跡調査)をしたものだが、政府が発注し、ソウル大医学研究員原子力影響疫学研究所(ソウル大医学研究所)が遂行した。

原発近隣住民を対象にした疫学調査は国内では1990年に初めて始まった。1989年、ある言論に霊光原発警備員の夫人が'脳の無い胎児'を2回も、死産または流産したという報道がされた。原発安全性をめぐって論議が拡大し、当時原発運営を担当した韓国電力がソウル大病院に住民健康実態調査を依頼した。韓電は調査結果として、住民たちの発病と原発の放射線との間には関連がないと発表した。だが、その後にも安全性に対する住民たちの不安感は弱まらなかった。そこで、政府が発注したコホート調査が本格的に始まったのだ。


 (c)聯合ニュース20114月環境団体会員たちが古里原発1号機閉鎖と核団地化撤回を要求する行進をしている。


ソウル大医学研究所は、原発周辺地域(5km以内)、近距離対照地域(530km)、遠距離対照地域(30km以上)を選定し、満20才以上の住民を調査対象とした。研究チームは「原発周辺地域のすべての部位の癌だけでなく、放射線関連癌(胃、肝臓、肺、骨、乳房、甲状腺、多発性骨髄腫、白血病)の発病危険度が対照地域に比べて男女ともに統計的に留意する差異がなかった」と結論を出した。また「原発放射線と周辺地域住民の癌発病危険度の間にも、因果的に関連があるということを示唆する証拠もない」と表明した。

ところがこの報告書には、結論と違う解釈ができる様々な端緒(糸口)が隠されていた。2011年、この報告書が初めて公開された時から学者たちの間では論争が起こった。現在、原子力安全委員会非常任委員を受け持っているキム・イクチュン(Kim IkJung)教授(東国大医大)たちは、政府に原資料公開を要求した【原資料=Raw data】。当時、教育科学部などが公開を拒否し、国会を通じて原資料を入手した【国会議員を通して入手した。誰かは不明】。ペク・ドミョン(Paek DoMyeong)ソウル大教授(保健大学院)とチュ・ヨンス(Ju YeongSu)翰林(ハンリム)大教授(医大)等が再検討した【チュ・ヨンス教授は、元の調査に学生として参加していると聞きました】。再検討結果をチュ教授が2012年、大韓職業環境医学会春季定期学会で発表した。世界人口年齢標準化発生率で調べてみたところ、遠距離甲状腺癌発生率を1とすれば、近距離に居住する女性(パク・クムソン氏が居住する地域)1.8倍、5km以内の近隣に居住する女性は2.5倍高い発病率が出てきた。

原発関連訴訟、堰が切れたように噴き出すことも

ソウル大医学研究所も、遠距離対照地域 → 近距離対照地域 → 周辺地域へと行けばいくほど、甲状腺癌発病危険度が増加する傾向が見られ、統計的に意味があることは報告書で明らかにしていた。だが、ソウル大医学研究所は男性の場合、こういう発病危険度に差がなく、原発近隣地域住民たちの間に起こっている甲状腺癌に対する過剰診療が原因であることもあり得る、放射線被ばくと甲状腺癌の因果関係は低いと結論を出した。反面、チュ・ヨンス教授は、発病危険度増加は、放射線の他には、他の考えられる根拠がないと論文で反論した。チュ教授は、甲状腺癌の他にも、原子力発電所労働者たちは一般人に比べて染色体異常が2倍以上多いと言うなど、ソウル大医学研究所と違った結論を下した。

このような論争を知ることになったソ・ウンギョン(Seo EunGyeong)弁護士は裁判所に対して、職業環境医学会の鑑定を要請した。裁判所の要請を受けた対韓職業環境医学会は、臨床委員会のレベルで意見を出すことにした。臨床委員会委員長を担当しているイム・ジョンハン(Im JongHan)仁荷(インハ)大教授(医大)は、「所属の医者たちとの討論を経て裁判所に鑑定書を出した。ソウル大報告書を見ても、原発近隣住民や遠距離住民でも同じレベルで医療検診とコホート調査がなされた。調査方法が同じだから、甲状腺癌発病危険が高いのは、放射線被ばくの可能性と見るのが科学的に合理的である」と説明した。大韓職業環境医学会は、イ氏の直膓癌発病や均道氏の自閉症発病は原子力発電所と因果関係があるとみなし難いが、朴氏の甲状腺癌は関連があると回答した。結果的に裁判所は、ソウル大医学研究所報告書の結論ではなく、大韓職業環境医学会の鑑定結果を採択したわけだ。

韓水原は直ちに控訴した。チェ・イェヨン(Choi YeYong)環境保健市民センター所長は「1130日まで原発周辺住民たちの中で甲状腺癌を病んでいる人々を集めて訴訟を起こす」と明らかにした。原発関連訴訟が本格的に始まった。

コ・チェギュ(Go JeGu)記者 unjusa@sisain.co.kr
記事入力2014-10-30 08:52 0


1 件のコメント:

  1. ツイターより:
    michiyoshi ‏@michiyoshi 9時間9時間前
    韓国すごいね、と言ってはいかんだろう。日本の司法があまりにも権力べったりなのだ。異常が当たり前になってる日本人 @che_kawasaki: 韓国イ・ジンソプさんの闘い
    http://oklos-che.blogspot.com/2015/03/blog-post_4.html … 原発と甲状腺がんとの因果関係を認める判決を勝ち取った影響で

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