2014年2月9日日曜日

講演の骨子:「世界から見た日本の原発問題―原発体制に抗する国際連帯を地域から」


2月7日 東京告白教会の自由を守る日記念講演会

「世界から見た日本の原発問題―原発体制に抗する国際連帯を地域から」

日時:2014年2月7日(金) 午後7時から午後9時 

場所:世田谷区烏山区民センター3階集会室 

                崔 勝久

講演の要約
原賠法という原発力メーカーの責任を免責する法律があるにもかかわらず、原発メーカーに事故の責任があるということをどうして在日である私が追及するようになったのか、それは、差別が当然視され、法律にまでその差別を正当化していた児童手当や年金制度の問題をそれはその法律がおかしい、国籍を理由に在日を解雇した日立は差別を犯した、それは許せないという、常識や差別を正当化する日本社会のあり方や制度、地域社会の中の不条理に挑戦してきた経験を私が持つからだと思います。

3・11の事故にもかかわらず日本と韓国が原発輸出を進めている事態を黙認できず、それを正当化する原賠法の問題点を看過せず、原賠法の背景にある、グローバリズムとあわせ戦後の植民地主義である原発体制の問題点を追求するなかで、原発メーカー訴訟が具体化しました。

原発問題をエネルギー問題と日本の国内問題の枠に限定せず、どうして原発事故が起こったのかということを世界の戦後史の中で改めて捉え直す必要があります。それはとりもなおさず、地域社会のあり方を考え直す新たな視点になるのではないでしょうか。


講演の骨子

1. 原発メーカー訴訟の始まり
・2014年1月30日、東京地裁にて原発メーカー訴訟の訴状提出
・原告、国内1058名、海外32ヶ国357名(韓国195名)、計1415名
・弁護団22名

2. 原発メーカー訴訟の意味すること
・事業者(電力会社)にのみ責任集中(原発メーカーはPL法の適応外)する、
原子力事業者の「健全な発展」を期する、原発メーカー保護の法律
・GEの原発輸出に際してアメリカから押しつけられた法律
・これを破る法的根拠
  ・憲法違反(新たな人権概念の提示、No Nukes権―原子力の恐怖から逃れて生きる権利の宣言)
・原賠法に基づく「求償」―未必の故意とは?
・証明できるメーカーの過失
  ・GE技術者が1976年にマークⅠ型の危険性を証言
  ・新指針に基づくバック・チェックをしていなかった
  ・想定外の地震ではなかった
  ・点検はメーカーが受け持つ、部品の劣化などの助言をしてこなかった

3. 世界最大級の企業(その背後にある軍隊、金融、国家)を相手の訴訟
原発体制はグローバリズムとあわせて戦後の植民地主義(植民地のない植民地主義、国民国家は植民地主義の再生産の装置―故西川長夫)
・虎の尻尾をつかんだ(ハイデルベルグの神学教授)

4. 女性の涙
・台湾の記者会見の後、この訴訟は「ダビデとゴリアテのよう」、くずけないで続けてほしい
・ドイツに避難した日本人女性、こんな日本のために在日の崔さんがわざわざ・・・

5. 「捨てられた石」(家を建てる者の捨てた石、これが礎の石となった)(マルコ12:11)
マルコ12章、より引用
・在日である自分が何者でどう生ければわからなかった(アイデンティテイの模索)
・民族の主体性として韓国の民主化闘争、祖国の統一運動への参加より、足元の在日の実態を直視する

6. 在日朝鮮人のアイデンティテイ
・個人のアイデンテイティに先立つナショナル・アイデンティテイ
・民族を絶対化せず、国民国家の枠を相対化する方向に
・既存の民族、国家ではなく、来るべき社会にアイデンティファイ(同一化)

7. 日立闘争との出会い
・韓国語も本名もわからず日立の国籍による就職差別闘争に共鳴
・日立の差別は日本の歪んだ歴史、社会の象徴と捉え、実態究明を裁判で徹底
・日立は解雇の理由を彼の「嘘」に求めたことが判明、完全勝利
・韓国の民主化闘争を担う学生が日本の企業進出、日立の差別を糾弾
・WCC(世界教会協議会)が裁判闘争支援を宣言、NY/ソウルでデモ
・韓国の新聞が社説で朴君の告発精神に学ぶと言及

8. 地域活動
・「民族運動としての地域活動」→民族差別と闘う砦づくり→地域全体の解放
・日立闘争勝利の後の地域集会で、児童手当・市営住宅などに国籍条項があることは差別ではないのかと住民からの意見
・市との国籍条項撤廃の闘い、銀行・クレジット会社糾弾闘争
・自分たちと同じように差別に沈黙することのないように保育、教育に集中

9. 国籍条項
・国籍条項の完全撤廃→その後、青弓社を出る(運営委員長の解任)
その対立の意味を後日、横浜国大の加藤千香子教授が論文にする(「戦後日本における公共性とその転換―1970年代を起点とする川崎・在日朝鮮人の問いを中心にー」(『都市の公共と非公共―20世紀の日本と東アジア』(日本経済評論社 2013)
・「多文化共生」が多様性を謳い文句に、市の施策に導入→市民運動と行政の癒着、崔たちは多文化共生を植民地主義のイデオロギーと批判
・地方公務員への道
  ・「当然の法理」のために行政、市職労、市民運動体が一体化
  ・門戸の解放は、「公権力の行使」の恣意的な解釈で職務の8割開放、管理職は締め出す、その後川崎方式が全国の標準に→多文化共生の普遍化

10. 「クソ朝鮮!日本から出て行け!!」の合唱
・3・11以降、民族。国籍を超え協働して(地域)社会の変革を訴えるが、3度、グーグルの使用停止に遭う
・在特会によって今や、都内で「朝鮮人を殺せ」というデモが、言論の自由という名目で黙認される情勢
・民族学校への差別・抑圧が続く

11. 日立闘争の意義―日本社会の差別の実態を明らかにした
・在日が当事者として差別を許さない闘いを展開した
・朴の入社後、大企業の社員にものを言わせない実態を経験
・多文化共生という言葉に、公務員、企業内社員の実態を合わせ考える
・民族差別を謝罪し、社内の改革を約束したが、差別を生みだした体質の変革に至らず、3・11を経験する→組合の沈黙、むしろ再稼働、原発輸出を謀る
・嘱託社員として日立に残った朴は日立経営者に原発からの徹底を求める

12. 社会構造としてある差別、加害者、被害者の固定化ではない
・70年代日立闘争の中でもそれに関わる日本人青年から言いだした加害者性は、観念にとどまったことが判明
・在日もまた地方や発展途上国との関係からは加害者の立場でもあり、加害者、被害者は絶対的な基準ではない、そのような複雑な様相を抱え込んだ形で戦後の植民地主義が地方と中央、列強と発展途上国との関係においても可視化されてきている。

13. 原発輸出は加害者になること
・原発体制は戦後の植民地主義であり、列強の核による世界支配の構造
(参考:IWJ小出裕章氏インタビュー 
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/124093
・それを支えるのが各国の原賠法
・日本、韓国はもはや原発を製造しないアメリカに代わって原発製造、輸出を担っている、アメリカの核の傘下でその支配の下で、発展途上国を支配する構造、事故の責任を取らず、使用済み核燃料の処置もなし

14. 原発メーカー訴訟
・差別の実態を直視しながら協働して社会を変えていく
・原発体制とは列強の核による世界支配であり、NPT体制
・原発体制を国内のエネルギー政策などの国内問題に矮小化すべきではない
・原発体制を世界の構造の中で捉えることが、地域内における民族差別や民主化されない諸問題にあらわれており、反核、反差別、反植民地主義の視点が不可避。地域内での実践を積み重ねることの重要性

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