2013年12月25日水曜日

ロック弁護士、世界の中心で愛をさけぶ! ―「原発メーカー訴訟」に向けて―

 12月6日の「秘密保護法」強行採決の翌日に東京・渋谷で行なわれた《大デモ》は、若い世代を中心に最終的には5500人以上(主催者発表)が参加し、同法に反対の声をあげた。その《大デモ》終了後も、元気に代々木公園でシャウトしていた、ちょっと見…ワルそうな1人のオヤジがいた。東京弁護士会所属の島昭宏弁護士がその人だ。

前日の「秘密保護法案」強行採決への怒り覚めやらず、参加者が最終的に5500人以上になった《大デモ》 (撮影・三上英次 以下同じ)

デモ終了後に、テント内インスタントステージで熱唱する島昭宏弁護士
 もちろん、ギター片手にロックを歌うのは、同弁護士が「ロック好き」ということもあるが、島弁護士らがいま取り組んでいるのが【原発メーカー訴訟】であり、デモ後の演奏は、その賛同者を募るのがねらいであった。
 〈3.11〉の原発事故で東京電力に対して多くの訴訟が起こされる中で、原発メーカーである東芝、日立、ゼネラル・エレクトリックなどの企業は、事故の責任を負わずに、〈脱原発〉どころか、そうした国内の〈脱原発〉ムードを打ち破るために原発の海外輸出までもくろんでいる。そういう「不正義」を、裁判を通して変えていこうというのが【原発メーカー訴訟】だ。

《大デモ》では、反原発ソングで知られる忌野清志郎も参加…
 その訴訟のねらいについて、島弁護士らが弁護団に名を連ねる【原発メーカー訴訟】公式サイトには次のように説明されている――「自動車の排気ガスによる喘息被害に対して、運転手や所有者以上にメーカーが賠償責任を問われるように、原発事故被害については、電力会社だけではなく、原子炉メーカーも当然に責任を追及されるべきです。ところが、メーカーはこれまでほとんど非難の対象とさえされていません。その原因は、原子力損害賠償法が電力会社のみに責任を集中させる制度を採用しているためです」
 「製造物責任法(PL法)」は、メーカーに対して製造物責任を課すが、原発メーカーだけは、原子力損害賠償法等によって免責されている。その点を、憲法14条(法の下の平等)違反として追及しようというのが弁護団の方針だ。さらに、憲法13条(幸福追求権)や25条(健康で文化的な最低限度の生活を営む権利)にもとづいて、「原子力の恐怖から免れて生きる権利」を〈新しい人権/ノー・ニュークス権〉として訴えていくという。
 原告には、原発事故によって精神的苦痛を受けた人であれば、誰でもなることができる。そして「たとえ裁判に負けても、原告になった人たちが、経済的損失を受けるようなことは一切無いので、原発メーカーの責任も問いたいと考える人は、ぜひ原告団に加わってほしい」と呼びかけた。
 島弁護士によれば、2014年1月末には提訴したいので来月(1月)上旬ぐらいまでには、原告団に加わる手続きを済ませてもらいたいという。

【写真A】
 さて――その《大デモ》だが、5000人を超える参加者が、快晴の空の下、思い思いに秘密保護法反対の声をあげていたが、その隊列の最後尾には、4~5キロのデモ行程中、ひたすら下を向いてうつむくようにして歩く3人の男女がいた。
 【写真A】には、中央にGパンを履いた男性が、そのすぐ左にはベージュのコートを右肩に掛けた若い女性が、そして画面右には、紫色のトレーナーを着た女性が写っている。3人は、写真のようにデモの隊列が詰まって手狭(てぜま)な状態でも、ずっと道路上に視線を落としたままだった。

 下の【写真B】のほうがよくわかるが、彼らはデモの最後尾で、道路上に落ちているタバコの吸い殻をゴミ袋に入れていたのだ。前日の自民党による強行採決に対して、「主権者」たる3人も、さぞ心にたまるものがあっただろう。しかし、彼らはひと声も怒りの声を発すること無く、素手で枯葉のあいだのどこの誰かが吸ったかもわからない吸い殻を拾い続けていた。
 ギター片手に【原発メーカー訴訟】を呼びかけるロック弁護士も、《大デモ》を陰で支えた寡黙な若者も、ハートの熱さでは負けてはいないが、電源三法等で巨額の利潤を生み出す原発推進派からすると、圧倒的にビンボーだ。もし、フトコロに多少なりともゆとりがある人がいれば……下記の〔1〕〔2〕、お好きなほうにご厚意を!
(了)

【写真B】
  《関連サイト》
〔1〕 「大デモ」公式サイト
 デモそのものは大成功であったが、収支としては赤字との由。実行委員会では引き続きカンパを募っている(詳細は、下記サイト参照)。
〔2〕 「原発メーカー訴訟」公式サイト
 もともと同訴訟の原告になるには参加費5000円が必要だったが、2013年夏に2000円に大幅値下げ、より参加しやすくなった。原告にならなくても1口1000円でサポーターになることもできる。
     
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◎ 12月6日の「秘密保護法」強行採決の翌日に行われた《大デモ》
   
    
    
      
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pen5362@yahoo.co.jp (三上英次/現代報道フォーラム)

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